対物レンズの表示の読み方
対物レンズの側面を見ると、多くの場合「10X」「0.25」「∞」「0.17」など、さまざまな文字や数字が印字されています。
これらは単なる型番ではなく、対物レンズの倍率や性能、対応する光学系、使用するカバーグラスの条件などを示す重要な情報です。
表示の意味がわかるようになると、現在使用している対物レンズの仕様を確認したり、交換用の対物レンズを選んだりするときにも役立ちます。
この記事では、対物レンズに表示されている代表的な文字や数字について、それぞれの意味と読み方を解説します。
対物レンズの主な表示・印字

対物レンズによって表記方法や記載されている項目は異なりますが、代表的な表示には次のようなものがあります。
| 表示例 | 意味 |
|---|---|
| 40X | 対物レンズの倍率 |
| 0.65 | 開口数(N.A.) |
| 160 | 有限遠補正光学系の機械的鏡筒長 |
| ∞ | 無限遠補正光学系 |
| 0.17 | 補正するカバーグラスの厚さ |
| 0 | カバーグラスを使用しない仕様 |
| - | 0.17 mm補正とノンカバーの共用 |
| Oilなど | 液浸対物レンズで使用する浸液 |
| PLANなど | 対物レンズの種類・補正方式 |
たとえば、
PLAN 40X / 0.65 ∞ / 0.17
という表示があったとします。
一見すると複雑ですが、それぞれの表示を分けて考えると、
「プラン対物レンズ・40倍・N.A. 0.65・無限遠補正・カバーグラス厚0.17 mm対応」
というように、対物レンズの基本的な仕様を読み取ることができます。
上記表示例に沿って、各項目について以下のとおり解説します。
「40X」:対物レンズの倍率
「4X」「10X」「20X」「40X」「100X」などの数字は、対物レンズそのものの倍率を表しています。
たとえば、
40X
と表示されていれば、40倍の対物レンズです。
注意したいのは、対物レンズの倍率と、顕微鏡で接眼レンズを介して観察するときの倍率として使用される「総合倍率」とは異なるという点です。
接眼レンズを使用して観察する一般的な光学顕微鏡では、
対物レンズの倍率 × 接眼レンズの倍率 = 総合倍率
となります。
たとえば、40倍の対物レンズと10倍の接眼レンズを組み合わせた場合、
40倍 × 10倍 = 400倍
となり、総合倍率は400倍です。
そのため、対物レンズに「40X」と表示されていても、顕微鏡全体の総合倍率が40倍という意味ではありません。
倍率を比較して検討する場合、総合倍率とではなく、対物レンズ倍率同士を比べる必要があります。
「0.65」:開口数(N.A.)
倍率の近くに表示されている「0.10」「0.25」「0.65」「1.25」などの数字は、開口数(Numerical Aperture:N.A.)を表しています。
たとえば、
40X / 0.65
と表示されていれば、
40X = 対物レンズ倍率40倍
0.65 = N.A. 0.65
という意味です。
N.A.は対物レンズの分解能に関係する重要な数値です。
分解能とは、近接した2点を別々のものとして見分ける能力のことです。一般的に、N.A.が大きいほど高い分解能を得ることができます。
つまり、「どれだけ大きく見えるか」を知るには倍率を、「どれだけ細かく見分けられるか」を考えるときにはN.A.を確認します。
対物レンズを比較するときは、倍率だけでなくN.A.にも注目してみましょう。
「160」:有限遠補正光学系の機械的鏡筒長
対物レンズに、
160
のような実数が印字されている場合は有限遠補正光学系用の対物レンズであることを示します。数字は機械的鏡筒長を表し、160mm用が一般的です。
WRAYMERの有限遠補正光学系用対物レンズも、機械的鏡筒長160 mmの自社顕微鏡での使用を想定しているため、160mm用となっています。
有限遠補正光学系では、対物レンズを通過した光が有限の距離で像を結ぶように設計されています。顕微鏡が有限遠補正光学系で設計されている場合、対物レンズも同様に有限遠補正光学系の製品を使用する必要があります。
「∞」:無限遠補正光学系
実数ではなく、
∞
という記号が表示されている対物レンズもあり、「∞」は無限遠補正光学系用の対物レンズであることを示しています。
無限遠補正光学系では、対物レンズを通過した光が平行光となり、顕微鏡内部にある結像レンズを通して像を形成します。
有限遠補正と無限遠補正は、単純にどちらの性能が高いというものではありません。
対物レンズを交換するときには、単に取り付けネジや倍率が同じというだけでなく、使用する顕微鏡が対応している光学系を確認する必要があります。
交換用の対物レンズを探している場合には、現在使用している対物レンズに「実数(160等)」と「∞」のどちらが表示されているかを確認しておきましょう。
【!】
旧式の顕微鏡等の場合、対物レンズに印字されている情報が少ない場合があります。顕微鏡自体の仕様等を確認し、光学系などに誤りがないようご注意ください。
「0.17」:カバーグラス補正
対物レンズの
0.17・1.1
等の印字は、対物レンズが想定しているカバーグラスの厚さを表しています。
「0.17」と表示されている場合は、厚さ0.17 mmのカバーグラスを使用した状態で観察することを想定した対物レンズです。
「1.0~1.2」の場合、スライドグラスやシャーレのガラス厚を想定しており、底面から観察を行う倒立型顕微鏡用の対物レンズと推察できます。
正立型の生物顕微鏡では、スライドグラス上の試料をカバーグラスで覆ったプレパラートを観察することが多いため、カバーグラスを使用する条件に合わせて設計された対物レンズ(カバーグラス補正0.17mm)が使用されます。
一方、金属表面などを直接観察する場合には、通常カバーグラスを使用しません。
そのため、対物レンズを選ぶ際には、観察する試料にカバーグラスを使用するかどうかも確認する必要があります。
「0」「-」:カバーグラスを使用しない場合など
カバーグラスに関する表示は「0.17」だけではありません。
「0」と表示されている場合は、カバーグラスを使用しない観察対象物、例えば金属表面や塗抹標本などの観察に適した仕様となっています。
「-」の表示は低倍率の対物レンズに多く見られ、こちらはカバーグラス補正を考慮していない対物レンズとお考えください。カバーグラスの有無にかかわらず観察に使用できますが、数字が無い=カバーグラスが無い標本用に補正されているものではないため注意しましょう。
現在使用している対物レンズを交換するときには、この表示も確認しておくとよいでしょう。
「Oil」など:液浸対物レンズの表示
対物レンズに、
Oil
などの浸液を示す表示がある場合は、液浸対物レンズです。
液浸対物レンズは、対物レンズと標本の間を所定の液体で満たして観察します。
WRAYMERで取り扱っている液浸系対物レンズは油浸系で、対物レンズと標本の間をオイルで満たすことによって高いN.A.を得ることができ、高い分解能での観察が可能になる仕様です。
※他社製品などには、水を用いる水浸系レンズ等があります。
高いN.A.が得られることで詳細な観察が可能ですが、対物レンズ・対象物などにはオイルを塗布するため、観察後には付着したオイルを適切に除去する必要があります。
乾燥系の対物レンズとは用法が大きく異なるため、倍率だけを見て「100倍の対物レンズ」と判断するのではなく、Oilなどの表示がないかも確認することが重要です。
「PLAN」など:対物レンズの種類
対物レンズには、倍率やN.A.だけでなく、レンズの補正方式などを示す名称が表示されている場合があります。
代表的なもののひとつが、PLANです。
「PLAN」は、像面湾曲収差を補正し、視野の平坦性を高めた対物レンズであることを示します。
一般的なアクロマート対物レンズは視野中心に焦点を合わせた場合に視野全体の約60%程度、プランアクロマート対物レンズでは約90~95%程度に同時に焦点が合います。
そのため、視野の中心だけでなく周辺まで観察したい場合や、顕微鏡用カメラで視野全体を撮影したい場合には、プランアクロマート対物レンズが適しています。
倍率やN.A.が同じであれば、プランアクロマートだから細かなものまで分解できるという意味ではなく、プランアクロマートの大きな特徴は視野周辺まで焦点の合った平坦な像を得やすいことですので、アクロマート対物レンズを同じ倍率・N.A.のプランアクロマート対物レンズに変更しても見える像の細かさ・大きさには差が生じないことには注意が必要です。
実際に対物レンズの表示を読んでみる
ここまでの内容を使って、実際の表示を読んでみましょう。
たとえば、対物レンズに次のような表示があるとします。
PLAN 40X / 0.65 ∞ / 0.17
この表示を項目ごとに分けると、次のようになります。
| 表示 | 読み取れる内容 |
|---|---|
| PLAN | 視野の平坦性を高めたプラン対物レンズ |
| 40X | 対物レンズ倍率40倍 |
| 0.65 | 開口数(N.A.)0.65 |
| ∞ | 無限遠補正光学系 |
| 0.17 | 厚さ0.17 mmのカバーグラスに対応 |
一見すると数字や記号が並んでいるだけですが、
レンズの種類 → 倍率 → N.A. → 光学系 → カバーグラス補正
というように分けて確認すると、その対物レンズの基本的な仕様を読み取ることができ、上記の対物レンズは無限遠補正光学系の顕微鏡で使用できる倍率40倍の対物レンズで、プレパラートのようなカバーグラスがかけられた標本の観察に適しており、視野全体の平坦性に優れたプランレンズであることが読み取れます。また、観察像の分解能に影響する開口数は0.65となります。
対物レンズを交換するときに確認する表示・印字
対物レンズの表示が特に役立つのが、現在使用している対物レンズを交換したり、別の倍率を追加したりするときです。
もちろん、対物レンズの取り付け先(顕微鏡レボルバ)にも様々な規格があり、ネジ径等が一致していないと取り付けられませんが、取り付けネジが同じだから使用できる、倍率が同じだから交換して使用できる、とは限りません。
交換用の対物レンズを選ぶときには、倍率やN.A.だけでなく、有限遠/無限遠補正、カバーグラス補正、同焦点距離、顕微鏡や観察用途との適合を確認する必要があります。
現在使用している対物レンズの側面にある表示は、その確認を行うための重要な手掛かりになります。
交換用の対物レンズを探す場合には、まず現在装着されている対物レンズの表示を確認しておくと、仕様を比較しやすくなります。
まとめ
対物レンズの側面には、小さなスペースにさまざまな情報が表示されています。
特に確認しておきたいのは、倍率、開口数(N.A.)、有限遠/無限遠補正、カバーグラス補正、液浸の有無、対物レンズの種類です。
対物レンズの表示を理解しておくと、現在使用しているレンズの仕様を確認するときだけでなく、対物レンズを交換・追加するときにも役立ちます。
ただし、対物レンズの互換性は表示の一部だけで判断できるものではありません。交換する場合は、使用している顕微鏡の仕様とあわせて確認したうえで、判断が難しい場合にはこれらの情報を添えてレイマーまでお問い合わせください。
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