蛍光顕微鏡
蛍光顕微鏡とは、特定の波長の光を試料に当て、試料から発生する蛍光を観察することができる顕微鏡です。蛍光物質は、特定波長の光からのエネルギーを受け、より長い波長の光を放出します。蛍光顕微鏡はこの放出された光を分離抽出して観察可能にします。蛍光顕微鏡を使うことで、特定の分子や構造を選択的に可視化することができ、通常の光学顕微鏡では観察できない情報を得ることができます。
蛍光顕微鏡は、細胞中の微細構造の観察や特定のタンパク質の検出、細胞や微生物の生死判定、導入した遺伝子の発現の確認、染色体、微生物、蛍光性を持つ鉱物や粒子の観察などに用いられます。
レイマーでは正立型の落射蛍光顕微鏡と、倒立型の落射蛍光顕微鏡をご用意しております。励起光源がLEDのものを中心に取り扱っていますが、水銀ランプのモデルもございます。
LED落射蛍光ユニットも取り扱っており、レイマー製の顕微鏡のみならず、オリンパスやニコンの顕微鏡にも取付可能です。
さまざまな蛍光色素に対応出来るよう、蛍光フィルタの種類も豊富に取り揃えています。
生物学・医学・農学・食品・材料科学・環境科学などの研究分野や医療現場など、幅広い分野でご使用いただけます。
蛍光顕微鏡ラインナップ
NX-4100FLSシリーズ
LED蛍光顕微鏡シングルチャンネル

¥474,100~、送料当社負担
- 蛍光観察
- 正立型
- 三眼鏡筒
- 広視野接眼レンズ
- LED光源
- Chroma製蛍光フィルタ
NX-4100FLSシリーズは、ひとつの蛍光フィルタと1灯のLED光源がセットとなった蛍光ユニットが搭載されています(シングルチャンネル)。
高品質なChroma製蛍光フィルタにより、明瞭な蛍光像が得られます。
シングルチャンネルの蛍光ユニットは、ロングパスの蛍光フィルタを搭載したモデルが4種類、バンドパスの蛍光フィルタを搭載したモデルが4種類、計8種類のラインナップです。目的に合ったモデルをお選び下さい。
LED光源なので、励起光の光量調整が可能です。
明視野観察も可能なので、蛍光観察と明視野観察を切り替えながら観察出来ます。
接眼レンズは広視野でハイ・アイポイント仕様。眼鏡をかけたままの検鏡も可能です。
顕微鏡用カメラの取り付けが可能です。高感度な顕微鏡カメラや、観察時の自家蛍光を抑える蛍光用対物レンズもオプションでご用意しております。
NX-4100FLMシリーズ
LED蛍光顕微鏡マルチチャンネル

¥762,300~、送料当社負担
- 蛍光観察
- 正立型
- 三眼鏡筒
- 広視野接眼レンズ
- LED光源
- Chroma製蛍光フィルタ
3種類の蛍光フィルタを搭載した正立型LED蛍光顕微鏡です。Chroma製の蛍光フィルタにより良質な蛍光像が得られます。
UV・B・Gの3種のLED励起光源を有し、使用する蛍光フィルタに応じて光源を切り替えできます。
3種類のロングパスフィルタを搭載したLPセットと、3種類のバンドパスフィルタを搭載したBPセットの2種をご用意しています。お好みで、フィルタの構成をカスタマイズすることもできます。
明視野観察も可能なので、蛍光観察と明視野観察を切り替えながら観察出来ます。明視野観察を行う場合、蛍光フィルタは最大3つまで装着可能です。明視野観察を行わない場合は、蛍光フィルタは最大4つまで装着可能です。
接眼レンズは広視野でハイ・アイポイント仕様。眼鏡をかけたままの検鏡も可能です。
顕微鏡用カメラの取り付けが可能です。高感度な顕微鏡カメラや、観察時の自家蛍光を抑える蛍光用対物レンズもオプションでご用意しております。
SXJ-5822FLSシリーズ
倒立型LED蛍光顕微鏡シングルチャンネル

税込¥849,200~、送料当社負担
- 蛍光観察
- 総合倍率40倍~200倍
- 倒立型
- 三眼鏡筒
- 広視野接眼レンズ
- LED光源
- Chroma製蛍光フィルタ
SXJ-5822FLSシリーズには、ひとつの蛍光フィルタと1灯のLED光源がセットとなった蛍光ユニットが搭載されています(シングルチャンネル)。
蛍光フィルタは高品質なChroma製で、明瞭な蛍光像が得られます。
シングルチャンネルの蛍光ユニットは8種類あります。目的に合ったモデルをお選び下さい。
ロングパス蛍光フィルタ搭載モデル:4種類
バンドパス蛍光フィルタ搭載モデル:4種類
励起光源は日亜製の高輝度LEDで、励起光の光量調整が可能です。
蛍光観察だけでなく、明視野観察・位相差観察も可能なので、同一部位を異なる観察法で検鏡することができます(4X、10X、20Xの明視野用対物レンズと、4X、10X、20Xの位相差用対物レンズが標準付属、明視野・位相差共に40倍対物レンズもオプションでご用意しています)。
接眼レンズは視野が広く、メガネをかけたままでも検鏡可能なハイアイポイント仕様。検鏡時が楽な姿勢で行えるエルゴノミックデザインです。
顕微鏡用カメラの取り付けが可能です。高感度な顕微鏡カメラや冷却カメラ、観察時の自家蛍光を抑える蛍光用対物レンズもオプションでご用意しております。
SXJ-5822FLMシリーズ
倒立型LED蛍光顕微鏡マルチチャンネル

税込¥1,137,400~、送料当社負担
- 蛍光観察
- 総合倍率40倍~200倍
- 倒立型
- 三眼鏡筒
- 広視野接眼レンズ
- LED光源
- Chroma製蛍光フィルタ
SXJ-5822FLMシリーズは、3種類の蛍光フィルタを搭載した正立型LED蛍光顕微鏡です。Chroma製の蛍光フィルタにより良質な蛍光像が得られます。
UV・B・Gの3種のLED励起光源を有し、使用する蛍光フィルタに応じて光源を切り替えできます。励起光は光量の調整が可能です。
SXJ-5822FLMシリーズには、以下の2つの種類があります。
LPセット:3種類のロングパスフィルタを搭載
BPセット:3種類のバンドパスフィルタを搭載
ご使用目的に応じて、蛍光フィルタの構成をカスタマイズすることもできます(蛍光フィルタは最大3つまで装着可能)。
蛍光観察だけでなく、明視野観察・位相差観察も可能なので、同一部位を異なる観察法で検鏡することができます(4X、10X、20Xの明視野用対物レンズと、4X、10X、20Xの位相差用対物レンズが標準付属、明視野・位相差共に40倍対物レンズもオプションでご用意しています)。
接眼レンズは広視野でハイ・アイポイント仕様。眼鏡をかけたままの検鏡も可能です。検鏡時が楽な姿勢で行えるエルゴノミックデザインです。
顕微鏡用カメラの取り付けが可能です。高感度な顕微鏡カメラや冷却カメラ、観察時の自家蛍光を抑える蛍光用対物レンズもオプションでご用意しております。
SXJ-5800TPHFL/SXJ-5803TPHFL 倒立型蛍光顕微鏡

税込¥962,500~、送料当社負担
- 蛍光観察
- 総合倍率40倍~200倍
- 倒立型
- 三眼鏡筒
- 広視野接眼レンズ
- 水銀ランプ
- Chroma製蛍光フィルタ
水銀ランプを光源とする倒立型の蛍光顕微鏡です。複数の蛍光色素を使用する多重染色の標本を、蛍光フィルタを切換ながら観察することができます。フィルタキューブが2つまで装着可能なSXJ-5800TPHFLと、3つまで装着可能なSXJ-5803TPHFLの2タイプがあります。
蛍光観察だけでなく、明視野観察・位相差観察も可能なので、同一部位を異なる観察法で検鏡することができます。
蛍光フィルタは、高品質なChroma製蛍光フィルタ。さまざまな蛍光色素に対応出来るよう、蛍光フィルタの種類も豊富に取り揃えています。オプションの ブランク蛍光用フィルタキューブを使用してユーザー独自処方の蛍光フィルタセットを構築することも可能です。
ハイアイポイントの広視野接眼レンズなので、メガネをかけたままでも検鏡可能です。エルゴノミックデザインで検鏡時の操作が楽な姿勢で行えます。
4X、10X、20Xの明視野用対物レンズと、4X、10X、20Xの位相差用対物レンズが標準付属しています。
落射蛍光ユニットラインナップ
LED落射蛍光ユニットシングルチャンネルFUSシリーズ

¥270,600~、送料当社負担
- 蛍光観察
- 正立用
- LED光源
- Chroma製蛍光フィルタ
正立型顕微鏡用の落射蛍光ユニットで、ひとつの蛍光フィルタと1灯のLED光源を備えています(シングルチャンネル)。
オリンパス用、ニコン用、レイマー用があります。
蛍光フィルタは高品質なChroma製で、明瞭な蛍光像が得られます。
ロングパスの蛍光フィルタを搭載したモデルが4種類、バンドパスの蛍光フィルタを搭載したモデルが4種類、計8種類のラインナップです。目的に合ったモデルをお選び下さい。
励起光源は高輝度LEDで、光量調整が可能です。蛍光フィルタに応じて適切なLED光源が搭載されています。
蛍光フィルタを光路に入れたり出したりできるので、蛍光観察と他の観察法を切り替えながら観察出来ます。
LED落射蛍光ユニットマルチチャンネルFUMシリーズ

¥192,500~、送料当社負担
- 蛍光観察
- 正立用
- LED光源
- Chroma製蛍光フィルタ
3種類の励起光源(UV/B/G)を搭載した、正立顕微鏡用のLED落射蛍光ユニットです(マルチチャンネル)。
オリンパス用、ニコン用、レイマー用があります。
高品質なChroma製の蛍光フィルタ8種類の中から、ご利用目的に合った蛍光フィルタを選択してご購入いただけます。
ターレット式で簡単に蛍光フィルタを変更出来ます。蛍光フィルタは最大3つまで搭載可能、明視野観察を行わない場は最大4つまで装着可能です。
使用する蛍光フィルタに応じてLEDの励起光源を切り替えて使用します。
倒立用LED落射蛍光ユニットシングルチャンネルFIS-SXJ

¥270,600~、送料当社負担
- 蛍光観察
- 倒立用
- LED光源
- Chroma製蛍光フィルタ
倒立型生物顕微鏡 SXJ-5800TPHL用のシンプルな落射蛍光ユニットです。ひとつの蛍光フィルタと1灯のLED光源を備えています(シングルチャンネル)。
蛍光フィルタは高品質なChroma製で、明瞭な蛍光像が得られます。
ロングパスの蛍光フィルタを搭載したモデルが4種類、バンドパスの蛍光フィルタを搭載したモデルが4種類、計8種類のラインナップです。目的に合ったモデルをお選び下さい。
励起光源は高輝度LEDで、光量調整が可能です。蛍光フィルタに応じて適切なLED光源が搭載されています。
蛍光フィルタを光路に入れたり出したりできるので、蛍光観察と他の観察法を切り替えながら観察出来ます。
販売終了
蛍光顕微鏡とは
蛍光顕微鏡(fluorescence microscope)は、特定波長の光を試料に照射し、試料から発せられる蛍光を観察できる顕微鏡です。
特定の分子や細胞の構造を高いコントラストで可視化できるため、通常の光学顕微鏡では観察が難しい微細構造の観察が可能です。
蛍光顕微鏡の基本構造と原理
蛍光顕微鏡の構造
蛍光顕微鏡は、一般的な光学顕微鏡(対物レンズ・接眼レンズ・鏡筒・ステージ等)の構造に加え、蛍光観察を行うための光学系(蛍光観察用の光源・蛍光フィルターキューブ)を備えています。
蛍光顕微鏡の光源(蛍光観察用の光源)
蛍光を発生させる光源は、以下2つの条件を満たす必要があります。
- 蛍光物質(蛍光色素・蛍光タンパク質)に応じた特定波長の光を有すること
- 蛍光を最大化できる十分な光量であること
これらの条件を満たすものとして、蛍光顕微鏡では以下のような光源が利用されています。
水銀ランプ
紫外~可視光域に不連続な輝線が複数ある、高輝度な光源です。水銀ランプの輝線に合う蛍光色素を利用すると効率的な励起ができます。
点灯時の発熱が大きい、点灯後に光源が安定するまで時間がかかる(10~15分程度)、寿命が短い(100~300時間程度)、産業廃棄物になる、などの欠点があります。
キセノンランプ
キセノンランプは、紫外~可視光域にわたり比較的均一な光強度分布を持つ高輝度な光源です。水銀ランプでは光強度が低く励起が難しい波長域でも、効率的に励起できます。
ランプの寿命は500~3000時間程度で、水銀ランプより長持ちするのも特徴です。
一方で、点灯時の発熱が大きい、点灯後に光源が安定するまで時間がかかる(30~45分程度)、産業廃棄物になる、といった欠点があります。
LED
長寿命である、点灯直後から安定した光が得られる、発熱が少ないといった利点がある光源です。発熱が少ないことにより、蛍光ユニット・蛍光顕微鏡の小型化が可能です。
LEDは発光する波長域が狭いものが用いられます。広い波長域のLEDでは特定の波長域での光強度が不足する場合があります。そのため、励起に必要な波長域を含む狭帯域のLED(例:UVだけを発するLED)を使用することで高い光強度を得ることができ、効率的な励起が行えます。水銀ランプやキセノンランプのようにひとつの光源で広い波長範囲をカバーできるわけではなく、観察する蛍光色素に適した波長を有する狭帯域で高輝度なLEDを選択する必要があります。
複数の蛍光色素に対応できるように設計された蛍光顕微鏡では、本体に複数のLED光源が搭載されており、求められる励起波長に応じて光源を切り替える構造になっています。
蛍光フィルターキューブ(蛍光フィルターブロック)
蛍光顕微鏡では、光源が発する光のうち、蛍光色素を励起するために必要な波長の光(励起光)だけを試料に照射します。
試料は、励起光によって蛍光色素が発する光(蛍光)を放出し、観察者はこの蛍光を観察することになります。
蛍光フィルターキューブは、励起光以外の光を遮断し、蛍光だけを選択して観察者に届ける役割を果たします。
蛍光フィルターキューブは、以下の3種類の光学フィルターで構成されています。
励起フィルター(Excitation filter)
蛍光物質の励起に必要な特定の波長域の光のみを透過し、それ以外の波長の光を遮断します。
ダイクロイックミラー(Dichroic Mirror)
バリアフィルターとも呼ばれます。試料から発せられた蛍光を含む特定の波長域の光のみを選択的に透過し、励起光の残渣や自家蛍光などの不要な光を遮断することで、目的の蛍光だけを観察者や検出器(カメラ)へ届けます。高感度かつ高コントラストな蛍光像を得るために使用されます。
吸収フィルターには、その透過特性によって主に以下の2種類があります。
ロングパスフィルター(Long-Pass Filter: LP)
特定の波長を基準に、それより長い波長の光を透過させ、短い波長の光を遮断します。
蛍光を最大限に捉えることができ、微弱な蛍光の観察や短い露光時間の撮影に適しています。
広い波長域の光を透過させるため、単一の蛍光色素だけでなく、複数の色素からの蛍光を区別せず同時に観察したい場合にも有効です。
透過域が広いため、目的の蛍光だけでなく背景の自家蛍光やノイズ成分まで透過させてしまい、蛍光像のコントラストが低下する場合があります。
バンドパスフィルター(Band-Pass Filter: BP)
特定の中心波長を持ち、その波長を中心とした狭い波長域(バンド幅)の光のみを透過させ、その他の波長の光を遮断します。
蛍光の波長にぴったり合う透過域を持つバンドパスフィルタを使用すると、蛍光以外の不要な光が極力カットされた、極めて高コントラストの蛍光像が得られます。
高解像度の蛍光画像の撮影や、複数種類の蛍光色素を分離して観察(多色イメージング)する場合に使用します(※)。
透過する波長域が狭いため、ロングパスフィルターに比べ透過光量が少なくなり、像が暗くなる傾向があります。
※一般的な多色イメージングでは、蛍光色素ごとに蛍光フィルタキューブを交換して個別に撮影し、画像を合成します。
複数の透過帯域(バンド)を持つように設計されたマルチバンドフィルター(Multi-Bandpass Filter)というものもあります。これを使用すると複数の蛍光色素からの蛍光をひとつのフィルターで同時に透過させ、一度に観察・撮影できます。
蛍光用対物レンズ
蛍光用対物レンズは、レンズ自体が蛍光を発しないよう低自家蛍光の素材(蛍石や特殊ガラスなど)を用いた対物レンズです。
蛍光顕微鏡を用いた観察では、対物レンズのガラスや接着剤に由来する自家蛍光が像のコントラストを低下させることがあります。このような場合、低自家蛍光の対物レンズを用いることで、高コントラストで明瞭な蛍光像が得られます。イマージョンオイルを使った観察では、低自家蛍光の浸液が用いられます。
蛍光顕微鏡の光学的原理
蛍光物質に特定の波長の光(励起光)が照射されると、分子内の電子が光のエネルギーを吸収して励起状態に移ります。励起状態はきわめて不安定であるため、電子は速やかに基底状態(元の状態)へ戻り、その過程でエネルギーの一部を光として放出します。この放出された光を蛍光といいます。
蛍光のエネルギーは励起光のエネルギーに対して小さく、通常は励起光よりも長い波長の光を発します(ストークスの法則)。蛍光顕微鏡では、励起光よりも長い波長の蛍光だけを取り出すことで、試料からの蛍光信号を効率よく観察できるようになっています。
蛍光顕微鏡の用途
蛍光顕微鏡は、基礎研究から臨床応用、さらに工業分野や教育に至るまで幅広く活用され、重要な役割を果たしています。主な用途は以下のとおりです。
- 生命科学分野:蛍光色素による標識や蛍光タンパク質の結合を利用し、特定のタンパク質や細胞内構造の位置および動態を追跡する研究などに用いられます。
- 医学研究分野:がん細胞の特定、ウイルス感染の可視化、薬剤作用の解析など、病態理解や治療法開発に貢献しています。
- 臨床分野:蛍光抗体法による抗原の局在同定や、免疫学的検査を通じた診断などに利用されています。
- 工業分野:高分子材料や半導体の欠陥解析、品質管理、材料評価などに応用されています。
- 教育分野:細胞構造や生体分子の機能を理解させる教材・実習器材として、学生の学習支援に活用されています。
蛍光顕微鏡の観察例
蛍光顕微鏡を用いた主な観察例として、以下が挙げられます。
- 細胞核の観察:DAPIなどの蛍光色素をDNAに結合させることで、細胞核の形態や分裂過程を観察したり、細胞の生死の識別に利用されます。
- 蛍光抗体法による観察:抗体を蛍光標識し、その抗体が結合する抗原の位置や動態の確認・追跡に利用されます。
- 細胞構造の観察:例えばミトコンドリアを緑色、アクチン細胞骨格を赤色に染め分けることで、細胞内構造の空間的関係を直観的な把握に活用されます。
- がん細胞の観察:蛍光プローブや蛍光タンパク質を導入することで、手術対象のがん細胞の位置把握や転移の早期検出に利用されます。
- ライブセルイメージング:蛍光標識したタンパク質を生細胞に導入し、時間経過に伴うタンパク質の移動や細胞のダイナミクスを動画として記録することで、生命現象の解析や理解に活用されます。
蛍光顕微鏡の使い方
蛍光顕微鏡でより良い蛍光像を得るためには、基本的な光学顕微鏡の操作・使い方の習熟に加え、以下のような蛍光観察特有の準備と設定が必要です。
蛍光試料の取り扱い
退色しやすく,光や時間により発光能力が低下します。遮光できるケースに収納するなど試料の保管状態に留意するほか,蛍光観察を行う際も励起光の照射時間や強度を最小限にし,蛍光色素の退色を抑えることが重要です。減光フィルターの使用や光量の調整によって励起光の照射量を適切にし,観察しない時間はシャッターで光を遮断することで,蛍光色素の退色を抑えることができます。
観察環境の準備
蛍光は微弱な光であるため、照明が明るい部屋や、日光が強く照射される環境では観察が困難です。
暗室での観察が理想ですが、難しい場合は部屋の照明を落とす、顕微鏡を遮光カバーやカーテンで囲むなどして、不要な光が視野に入らないようにしましょう。
蛍光フィルターキューブの選択
明瞭な蛍光像を観察するためには、観察対象の蛍光色素に適した蛍光フィルターキューブを使用することが非常に重要です。適切な励起光の波長、発生する蛍光を分離抽出できるフィルターで構成された蛍光フィルターキューブを選定します。
対物レンズの選択
明視野観察用の対物レンズでも蛍光観察は可能ですが、レンズの自家蛍光が問題となる場合は、低自家蛍光設計のレンズを使用します。
イマージョンオイルを用いる蛍光観察の場合は、低自家蛍光の浸液を用います。
光源の準備
観察対象の蛍光物質を励起できる波長の光を含む光源を選択します。
水銀ランプの場合
幅広い波長を含むため、多くの蛍光物質に対応可能ですが、発光が安定するまでに点灯から10〜15分程度の時間を要します。
消灯後に再度点灯させる際にも同程度の待機時間を要するため、計画的な運用が望まれます。
LED光源の場合
点灯および消灯後の待機時間が不要で、光源自体の光量を調整できるため、扱いやすい光源です。ただし、LED光源によっては波長域が狭い場合があるため、観察対象の蛍光物質に適した光源を選ぶことが重要です。
蛍光顕微鏡像の撮影・カメラの選定
微弱な光である蛍光を撮影する場合は、僅かな光を検知できる高感度なカメラが適しています。
非常に弱い蛍光では長時間の露光が必要になることがあり、その際、カメラのイメージセンサーが熱を帯びることで暗電流(熱ノイズ)が発生しやすくなります。冷却機構付きカメラを使用すれば暗電流を低減でき、長時間露光でもノイズの少ない高品質な画像が得られます。
その他撮影条件(露出時間、カラーバランスなど)を最適化することで、より良い蛍光画像が得られます。
蛍光顕微鏡の種類
蛍光顕微鏡はその構造により正立型と倒立型に大別され、それぞれ異なる特徴と用途を持ちます。
正立型蛍光顕微鏡
構造
正立型蛍光顕微鏡は、最も標準的な顕微鏡の形状です。対物レンズは標本を載せるステージの上に配置されます。標本を上方から観察する構造です。
焦点調整は、主にステージを上下に動かすことで行います。
用途
生物学、医学分野における組織切片や細胞のスライドガラス標本の観察に用いられます。プレパラート標本は均一な厚さで対物レンズとの距離を詰めやすいため、高分解能で、油浸対物レンズを用いた観察にも向いています。
不透明な試料の観察:金属材料や半導体など、光を透過しない試料を落射照明(反射光)で観察にも用いられることがあります。
倒立型蛍光顕微鏡
構造
倒立型蛍光顕微鏡は、正立型とは対照的な構造を持ちます。対物レンズは標本を載せるステージの「下」に配置されます。標本を下方(底面側)から観察します。
焦点調整は主に対物レンズ側を上下に動かすことで行い、ステージは固定式のものが一般的です。
用途
主に生きた細胞(ライブセル)の観察や、厚みのある容器に入った試料の観察に用いられます。
生細胞イメージング(ライブセルイメージング):細胞培養ディッシュやウェルプレート、フラスコなど、底が透明な培養容器に入った細胞を、培地や容器ごと下から観察できます。
マニピュレーターなどを用いた作業:ステージ上部に広くて自由な空間があるため、細胞のマイクロインジェクションやパッチクランプ法など、顕微鏡下で微細な操作を伴う実験に適しています。
大型・重量試料の観察:ステージが固定式で頑丈なため、大きくて重い試料を安定して載せることができます。
連続観察:試料を交換してもステージ位置が変わらないため、焦点を合わせ直す手間が少なく、ルーチン観察にも向いています。
蛍光顕微鏡のよくある質問
以下、蛍光顕微鏡についてよくある質問へのリンクをまとめました。
※別サイト(レイマーテクニカルサポートページ)が開きます。
蛍光顕微鏡の観察方法・テクニック
- カメラ撮影像におけるケラレ・輝度ムラの対処法
- 接眼レンズ観察時における輝度ムラ・ケラレの対処法
- 蛍光顕微鏡で観察する際の光退色対策
- 微光イメージング時の冷却機能の要否と使用する目安
- BX-3500TFL落射蛍光ユニットの遮蔽板使用方法





